地域に伝わる昔話などについて
 二見駅より徒歩で十分位いくと右側にドライブインがある。そこから100米位南方に採石場の跡がある。
 その北側に小さな滝があり普段は水はないがその上の雑木林の中に小さな池の跡と思われ
る所がある。
 昔、この滝の下まで海水がよせていた。現在は国道が走り二見川の堤防工事などがおこなわれた為、昔の面影はないが肥後国誌によれば、須口より二見へ通じる街道の東の傍に小さな滝があるのを云う。
 此の水源の山上に小池があり昔より鳥賊が此の池に住んでいた。人の足音がすれば、鳥賊がくろみを吹いて水が黒くにごったと云う。最近は此の池は埋れて形ばかりがある。又此の辺に貝の化石も出土するとの事である。
 近年この付近は、採石場、ドライブインが建ち並び又国道が走り昼夜の別なく車の往来が激しく昔日の面影はなく村人達にも忘れ去られようとしている。
その1 「君が渕」

〜二見郷土誌より〜

 二見川と下大野川が合流する地点が君ケ渕である。
 昔、球磨川に住んでいた大蛇が、川舟の「艪」の音が「ギイー、ギイー」と高鳴るのに恐れをなして、君ケ渕に移り住んだと伝えられている。
 その頃の渕は青々とした水をたたえ、底なしの渕として恐れられていた。そのため渕に近寄る人影もなく、これに乗じて山賊が出没して里人や旅人から金品を強奪したと言われる。
 昔、播磨の国(今の兵庫県)から、此の渕に一人のゴ女(目が見えない女)がやってきた。その名をお君と言う。お君は物思わしげに此の渕をながめていたが、やがて何処となく立去った。それから幾月か過ち、こんどは一人の琵琶法師がお君をたずねてこの地にやってきたが、お君に逢えないことと、長い旅の疲れのため渕のほとりに身を投げ出して旅の疲れをいやすのであった。かなわぬ恋に身を焦がした法師は、渕に突出した岩に座って今生の名残りとばかり全身全霊を傾けて愛用の琵琶を弾き終ると、琵琶を抱いたまま身を投じたと伝えられる。
 それからこの渕を君ケ渕と呼ぶようになったと言う伝説がある。琵琶法師の哀れな姿が水に浮いているのを里人によって発見されたのは数日後であった。又、渕より200米下流で法師の琵琶が発見された。そこを琵琶湖と呼んでいる。
 最近、開発が進むにつれて、住昔の不気味な渕の面影はなく、渕と呼ばれる附近は土砂が堆積して芦が生えている。その上渕に沿って国道3号線が走り、昼夜の別なくマイカーの騒音がひどく、今では法師やお君の物語をしのぶ面影もない。
  
その2 「烏賊渕」